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2009-08-31 00:00
麻薬汚染と規制をめぐる問題
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
例ののりピーを巡ってのマスコミの馬鹿騒ぎではないが、麻薬汚染はかなり深刻な問題のようだ。20日の朝日・日経の夕刊によれば、押収された大麻が262キロ。末端価格がグラム9万円というから、250億円になろうという商品だ。原価(!)が何ほどのものかは知らないが、扱っている方々の顔ぶれから拝察するに、粗利200億円のビジネスになっていても不思議はあるまい。もっとも、大麻などというのは麻薬としてはさして重要な地位を占めず、コカインとか、へロインというのが王様の地位を占めるのだという。かのタリバンの軍資金のほとんどがこれによっているというのは周知の事実だ。のみならず、これを主たる収入源にしている農民の存在は、ミャンマーを始め、あちこちに知られている。まともな農業に復帰させようとしても、収入単価が桁外れだから、なかなかうまくゆかないとも聞いた。
さして該博な知識を持っている訳でもない麻薬の話を始めたのには訳がある。麻薬・非合法・暗黒街といったトリオは、麻薬によって荒廃する個人人格と同じように社会的な問題だというのは人も知るところだ。後者はともかく、前者の方は使用を合法化することによって解決できるのではないか、という論者が以前から存在している。決まってひかれるのがかのアメリカの禁酒法時代で、アルコールを非合法化したとたんにこれが暴力団の資金源になった。そのあたりの事情は speakeasyを始めとしてハリウッド映画に詳しいから省略するとして、早い話が麻薬使用は個人の責任において勝手にやればよろしい、とすれば少なくともアングラ組織の資金源にはならなくなる、ということだ。
この論者によれば、タバコや、同列に並べては申し訳ないが売春も同じことだという。パチンコやスロットマシンも、なまじ現金化に制約を加えるから、こわいお兄さんたちが出没するようになる。したがって、非合法化は間接的な暴力団温存の支援体制だ、という訳だ。この議論には様々な見地から反論の余地はあるだろうし、現にそちらの方が主流ではある。しかし、全ての「規制」が誰かを潤わせることになる、というのは永遠の真理であることを喪わない。それが道徳と暴力団みたいな話になるとためらいを示す人が増えるが、馬鹿げた規制と、それによって潤うお役所関連の外郭団体みたいな話になると、にわかに議論の俎上にも上らなくなる。
大麻が250億円(まあ、これはバレた分だけだから、実態はその数倍だろうが)。ちなみにこの金額はごみ焼却施設の談合を巡っての住民訴訟で、住民勝訴によって業者が07年以降10件について支払った賠償金と偶然だが一致する(8月20日付朝日夕刊1面)。国土交通省、外務省、文部科学省などのお役人とそのお仲間がムダ遣いしている金額は、少なく見積もってもその百倍はある。のりピーで大騒ぎしたマスコミがこちらの方は頬かむりをしている。まさか記者クラブを通じて付け届けが行き渡っている訳でもあるまいが。
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