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2009-08-25 00:00
(連載)米国の心配は、日本政治の漂流(2)
若林 秀樹
元参議院議員(民主党)
かつての冷戦時代のように、米ソが対立する時代であれば、日本も対米依存型の外交で済んだ。しかし今は、グローバル化の進展、中国やインド等の新興国の台頭、テロ脅威の拡散など、世界は益々多極化し、脅威が複雑に拡散する時代に入った。先進各国は目標を共有化しつつも、日々の課題に対して、各国が独自に与えられた役割と責任を果たさなければならない。また米国にとって重要な国はもはや同盟国だけとは限らない。敵対関係にあった国にも時間を割いて対応しなくてはならない。その中で日本がこれまでのように主体性を持たず、過度な米国追従・依存政策を取れば、それは一転してアメリカの重荷になってくるのである。小泉政権時代のように、日本が隣国である中国や韓国との関係を悪化させたままで、様々な問題解決の拠り所を日米関係に求めてくれば、それは米国にとって望ましくないことは言うまでもない。民主党の「自立した外交」は、米国にとって日本が真の自立した同盟国として責任の果たせるパートナーになることを期待するものであり、「アジアを重視する政策」は、中国との関係を重要視するアメリカにとっても、日本がアメリカと距離を置かない限り悪くない話なのである。
アメリカは、日本が民主党政権になっても、一時的な混乱は別として、そのこと自体が日米関係を長期的に悪化させるとは思っていない。衆議院で圧倒的な議席数を誇る自民党政権下でも、例えば「普天間基地移転問題」は一向に進展せず、何も決められず短期政権を繰り返す今の自民党には愛想を尽かし、限界も感じている。あえて自民党政権のいい点を上げるなら、アメリカに従順であり、その結果として「政策(日本の行動)がわかりやすい」だけである。
しかしアメリカが一番心配するのは、民主党政権ではなく、次回総選挙で新たな政権が生れても、新政権が安定せず、出口の見えない政治の漂流状態が続くことである。その結果として、日米関係は安定せず、日米の間の協力がしばらく進まなくなるということである。気がつけば、日本は世界から置いてきぼりにされ、米国と中国との関係は一層進展し、米中のみならず、世界から益々相手にされなくなることである。これは日本にとって由々しき問題である。
しかし政権は、定期的に代わることが前提であり、それが今の政治システムに組み込まれた要素なのである。一時的な混乱、政治の漂流は、産みの苦しみであり、通過しなくてはならないステップである。今のままの政治体制が継続したとしても、それは問題の先送りにすぎない。政権交代によって、例えば日米関係が一時的に混乱しても、それによって戦後外交の課題が浮き彫りになり、国民は痛みを持って問題の本質を感じられるようになるのである。今のまま手術をせず、数年後に病状が急速に悪化して突然死を起こすのがいいのか、それより、治癒に望みをかけて、逸早く手術をするのがいいのか、国民の選択である。手術で失血死するまでのような民主党に対する不安感はすでに除去されている。日本に残された時間はあまりない。日本の未来がかかった判断が間近に迫る。(おわり)
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