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2009-07-06 00:00
懲罰的投票行動の結果の危険度
杉浦正章
政治評論家
政策の選択でなく、懲罰的な投票行動としか考えられない流れで、政権交代が加速されそうな雲行きである。全ては自民党の身から出たさびである。首相・麻生太郎が声高に政策論争を挑んでも、民放テレビなど大衆報道機関は聞く耳を持たない。それどころか政府・与党は、放送法違反すれすれの“袋だたき”にあっている。それでは懲罰投票で政治は変わるだろうか。はっきり言って政治を知れば知る者ほど、民主党政権への期待値は低い。底が割れているのである。怖いのは自民党政権への幻滅で民主党に一票投じた一般国民が、民主党政権で味わう幻滅感で、政治不信が極みに達することである。それこそ戦後民主主義最大の危機が訪れかねない。民主党へ流れる浮動票の多くは「一度政権を交代させる」という流れであろう。「自民党にお灸を据える」、「民主党がよいか試してみる」といった消極的選択の思想に基づいた投票行動であろう。
民主党のマニフェストを精読・理解した積極的な投票行動ではない。自民党政権の“ていたらく”に対する「懲罰」なのである。たしかに「懲罰」を受けても仕方がない側面が、自民党にはある。長期政権で雨漏りが激しく、土台も腐って、耐用年数が過ぎた屋台骨をだましだまし使ってきたのである。2世・3世議員が増えて活気も失せ、首相候補もいなくなった。とりわけ安倍晋三政権以後の政権は、首相候補の「残滓」で政権を構成してきた。これ以上首相候補はいないし、無理にタレント議員を首相候補としても、国民はだまされまい。献金偽装事件があっにもかかわらず、「麻生と鳩山由起夫のどちらが、首相にふさわしいか」という読売新聞の世論調査では、鳩山41%―麻生氏24%で、鳩山優位だ。日経の調査でも、麻生11%、鳩山22%のダブルスコアだ。朝日の6日付公表の調査でも、麻生22%、鳩山42%。
選挙情勢もダブルスコアで民主党がリードしている。それでは民主党政権が国民の前に展開するのは、希望だろうか、幻滅だろうか。民主党は後期高齢者医療制度、消えた年金、消した年金など敵失によって支持を拡大してきた。しかし現実政治の面では、朝日新聞ですら社説で指摘するように、ばらまき政策の財源問題に始まって、旧社会党左派を党内に抱えた安保政策の非現実性が消えない。財務相・与謝野馨が7月5日、民主党のマニフェストについて「ほとんどが空想、だまし絵の世界」と形容しているとおりであろう。クリーン政党であるはずの党の代表が、政権獲得前から2代にわたって政治献金で底知れぬ暗部をさらけ出している。明らかに2人とも自民党の悪しき政治の部分を引き継いでいる。こうした民主党が政権発足早々に壁に突き当たるのは目に見えている。
次の内閣の閣僚名簿を見ると旧社会党系が目立ち、日教組出身もいる。国旗国歌法案に反対した議員が6人、北朝鮮に近い議員も数人。ちなみに外相候補の鉢呂吉雄は元社会党で、日教組を支持基盤にもつ。「外務・防衛について何も知らない」と言われるのはご愛敬としても、国旗国歌法案に反対の立場は、外相としていかがか。次の内閣が本当に民主党内閣となったら、閣議は四分五裂とならないだろうか。外交・安保上の機密保持は大丈夫か。こうした政権を国民は目の当たりにすることになる。“お灸投票”、“お試し投票”で選択した政権が、その全容を露わにして始めて気づくことでもある。しかし、民主党には中堅・若手議員に関しては、世襲ばかりの自民党より優秀さを感ずる議員が多いことも確かだ。いっそ思い切って閣僚を中堅・若手中心で構成すれば期待値が高まるかも知れない。しかし寄り合い所帯とあっては、これもやりきれまい。それにしても悪質きわまりない「献金偽装首相」を本当に国民は選ぶのだろうか。
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