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2009-07-03 00:00
中東情勢に見えてきた一筋の光
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
パレスチナに対する強硬派として知られているのみならず、イスラエル・パレスチナ境界線のあのグロテスクな壁の建設や、西岸地域への入植者の橋頭堡建設、さらにはガザ空爆を強行し続けたオルマート前首相(汚職により辞意を表明したものの、未だに影響力を保持していると伝えられる)。さらには、彼の後継者として「イスラエル・パレスチナ併存」を断固拒否するナタニエフ。かたや、ガザ地区を実効支配するこれまた強硬派のハマスと、西岸地区に政権を保持する(穏健派)ファタハのアッバス大統領の反目と対立。入植即時停止まではいっさいの交渉に応じないとするハマスと、武装解除しない限りハマスとの話し合いにはいっさい応じないとするイスラエル。完全にデッドロックに乗り上げていたかに見えた中東情勢も、オバマ大統領の就任と、エジプトを中心とするアラブ諸国の調停介入の動きで、いささかの光明が見え始めるかと期待されたものの、見るべき進展のないまま事態が推移しているのは、周知の通りだ。
筆者の見るところ、中東和平はタカ派指導者の元でしか実現されない、と考えるのが現実的であり、その意味では希望が持てなくもない推移なのだが、それにしても対立する両者間の亀裂は余りにも大きく、膠着状態の打破には、なんらかのきっかけが望まれていた。それがどんなかたちで顕在化するかが大きな疑問符だったといって良い。最近浮上したイランの核武装に対するオバマの断固たる姿勢は、そのきっかけになるのではないか。さらには、エジプトを中心とするアラブ諸国の調停介入が、直接にイスラエル・パレスチナを相手にすると同時に、ハマス・ファタハ間の和解に軸足をおいた、というのがいま一つの新しい動きになりはしないか。この観測が、少し具体的な形をとり始めたように見える、という報道がCNNのケッセルとクロシェンドラーによって、6月29日IPS紙面に登場した。
エジプトが、ハマスとファタハに対して7月7日を和解の期限とし、それに応じなければ手を引く、と言明した、というのがその内容の一つだ。両者が武力抗争を中止し、アッバスを首班とするパレスチナ政府がガザに成立すれば、エジプトを中心としたアラブ諸国がガザに駐留して治安維持に当たるという。他方、イスラエルが入植地建設を断念すれば、アラブ諸国はイスラエルの存在を承認するともいう。ハマスが存在する限りいっさいの交渉に応じないとするナタニエフが、この提案に応じるか否かはいまだ不透明だが、アメリカはもとより、フランス・イタリーを中軸とするEU諸国もこの提案を強く支持しているという事態に、ナタニエフも腹を決めるのではないか、という見方も強い。いまさらアッバス指導下のファタハ統治を否定するのは非現実的であるのみならず、アッバスをいただくガザ(と西海岸)のパレスチナ政権が西欧諸国によって裏書きされるこの好機を逸するのは、余りにも喪うものが大きいだろう、ということだ。
ユダヤ系の影響力の下にあると見なされているCNNの報道だけに、この筋書き通りにすんなりことが収まるかどうかはまだ不明だが、久しぶりに「手詰まり」感の中に一筋の光を見る思いがする。
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