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2009-06-26 00:00
新しい平和主義を国是に
湯下 博之
杏林大学客員教授
5月3日の憲法記念日に、世論調査を含む報道ぶりを見て、それ迄の種々の出来事をも踏まえて、いろいろ考えさせられた。憲法は、制定以後の状況の変化をも踏まえて、現在の目で見る必要があり、そのことは世論調査にも現われている。現在の目で見て、守るべきものは守り、変えるべきものは変えることが必要ということであろうが、変えると言っても条文を変えるのではなく、解釈や考え方を変えることが必要なものもある。その代表的なものが、平和主義についての考え方であるように思う。
従来、日本国憲法の平和主義とは、軍隊を持たないこと、そして自衛のための武力は持てるが、日本が攻撃された場合の自衛行動以外には武力を用いないこと、であると考えられてきたように思う。即ち、自ら武力を用いることはしないのが平和主義である、と考えられてきたように思う。しかし、このような考え方は時代に合わなくなっており、現代の国際社会の現実の下では、もっと積極的な平和活動が必要とされている。冷戦時代には、日本は、安全保障は米国に委ねて、経済に専念することで問題がなかった。しかし、冷戦が終結し、更に米国一極体制にも変化が生じて、多極化に向かうようになり、事情は一変した。
国際社会は国内社会とは異なり、政府もなく、議会もなく、警察もない。平和の問題を含め、物事を処理するには、主要国を中心に関係国が相談し、合意を作ったり、協力して行動をとるしか方法がない。日本を含む主要国には、積極的に協議に参加し、応分の貢献をすることが役割となり、そうしないのは非協力であり、次第に相手にされなくなる。中国はそうするが、日本はそうしない、ということになれば、中国は発言権を持つが、日本は持てない。それでよい筈がない。そのような応分の協力は、政治面でのものもあれば、経済面のものもあるが、軍事面のものも当然含まれる。軍事面の国際協力とは、自衛隊の海外派遣を含み、かつ必要に応じて武力行使を含むものであるが、憲法第9条がこれを禁じているとは考え難い。
なぜなら、憲法第9条が禁じているのは、国権の発動たる戦争と、外国との紛争を武力により解決することであって、国際社会の平和と安定のために国際社会の一員として武力を用いて協力することは、別の問題だからである。むしろ、憲法前文に言う「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい」との立場からは、必要に応じて武力を用いることを含めて、国際社会の行動に参加すべきことは、湾岸戦争やソマリア沖の海賊問題の例からも明らかであろう。平和主義を掲げる日本は、先ず外交の分野で積極的に努力することが重要であり、日本の伝統的な価値観である調和や共生の思想を世界に広める努力も必要である。単に軍事力を行使しないという平和主義でなく、世界に平和を実現することを国是とする新しい平和主義が必要になっている。
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