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2009-05-28 00:00
党首討論に勝っても、支持率アップにつながらない麻生
杉浦正章
政治評論家
党首討論は、まるで麻生セメント社長対専修大学助教授の対決のようだった。この「社長対学者」対決は、つまるところ小沢擁護と小沢批判に凝縮された結果、論戦そのものは討論技術も含めて、7対3で首相・麻生太郎の勝ちとなった。しかしテレビ視聴者は、家庭の主婦など「学者風好み」が多く、「国民目線」では意外と「鳩山さんおかわいそう」と同情をかっているかも知れない。討論は、側近の選挙対策副委員長・菅義偉と練りに練った作戦どおりに進んだのだろう。財源論議などは後日にとっておいて、「小沢問題」に集中しようという作戦だ。合計50分近い討論の16分が経過した頃、麻生が突然鳩山のキャッチフレーズ「国民目線」をとらえて、「国民目線というなら、最大の関心は西松の問題」と切り込み、以後30分以上「小沢問題」に引っ張り込んだ。
「責任をとった方が、代表に次ぐ代表代行というのは、国民目線では理解しがたい」と「小沢院政」批判から始めた。企業献金全面禁止の民主党案についても、麻生は「現在の法律すら守らずに、制度が悪いというのは、すり替え」と突っ込んだ。鳩山は「一方は秘書が逮捕され、他方はおとがめなし。これが検察官僚のやることなのか」と切り返したが、この発言は世論とかい離している。圧巻は、鳩山が「小沢さんは正しいことをやっていた。でも秘書が逮捕された」と述べたところを、麻生がすかさずとらえて、「いま正しいことをやったと言ったのか」と斬り込んだ。鳩山は内心「失敗した」と思ったのだろう、ひるんだ隙に麻生が「本人が正しいと思っても、間違えば逮捕される。国策捜査に当たらない」とまっこう唐竹割りの面を取って、事実上勝負は終わった。それにしても麻生は、敏感に反応した。
そこで全国紙が社説でどう反応しているかだが、鳩山を褒めていない。むしろ批判的だ。朝日新聞は鳩山の検察批判発言をとらえて「そこに力点を置きすぎれば、自民党政治に突きつけた『官僚主導VS.国民主導』という肝心の対立軸がぼやけてしまう」と矛盾をついた。毎日も「首相が小沢氏の問題を取り上げるのは承知していたはずだ。この問題にどう対応するか、党としてきちんと整理されていない姿も露呈することとなった」。産経はもっと率直に「小沢氏や民主党の説明責任が果たされていない状況では、首相の主張の方が説得力を持つだろう」。
鳩山の政治理念“友愛”についても、読売が「首相は『抽象論ではなく、経済危機などの現実にどう対応するかが最も重要だ』と切り返したが、政権を担当する身として当然のことといえよう」と論評した。新聞各紙は記事では、対等の戦いのように書いているが、明らかに鳩山の負けだ。しかし冒頭述べたように、もっともらしく「友愛」を説く鳩山に、新鮮さを感じる層がいる。かってプロの政治家から毛嫌いされた学者都知事・美濃部亮吉が、都民の間で人気が高かったのと似ている。したがって、勝った麻生の支持率好転につながるかというと、まずつながるまい。
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