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2009-05-26 00:00
将軍様の真意はどこにあるのか
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
また将軍様が火遊びを始めた。一体あの方のなさることの真意がどこにあるのかについては、度ごとに識者の観測が報道されたり、中には系統的に分析する出版があったりだ。その全てを詳らかにしている訳ではないが、おおよそ4つ位の流れがあるように見受けられる。一つは国内向け。神格化された永久指導体制(これは若干疑わしいが、仮にこう呼んでおく)を国民に納得させておくためには、我らが指導者様は常に偉大な存在、なして出来ないことはない、という神話を折に触れて実証(?)し続ける必要があるというもの。
これと裏腹なのが二つ目の肥大したエゴ。つまり、韓半島の正統的な国家は北であって、南ではないということを折に触れて証明する材料が必要だという。国際的な存在証明の努力ということになる。三つ目には外交手段。上記の2つとは裏腹に、抹殺されたり、併合されたりするというトラウマから自由であるためには、常にそれを許さない、そんなことを考えでもしたら猛烈に高価なものにつくぞ、という示威行動が必要になる。四つ目には経済行為。あれも不足、これも欠乏という、国民一人当たり数百ドルの所得の国では、なんとかだだをこねて必要な資源を入手せねばならぬ。そのためには恫喝のバーゲニング・チップがなくてはならない。確証はないが、核兵器を数少ない輸出物資だとみなしている。あるいは、欲しがるものをよこさないとそうするぞ、というのもこの系列だろう。
いうまでもなく、この4つはお互いにリンクしているから、このテの国と交渉したり、お付き合いをする時には、性急な解決を求めれば求めるだけ、求めた側が損をする仕掛けになっている。ここを読み損なって、いつも後出しじゃんけんで負け続けているのが米国外交だと言ってよいだろう。本気でそうお考えかどうかは別にして、上記の理由から自国は米国と対等に渡り合っているというポーズをとり続けている将軍様だから、しびれを切らした方がいつも「とられ損」という結果になる。核拡散阻止に向けてはかなり本気のオバマ政権だから、今度ばかりはカーターやブッシュの失敗の轍は踏まないとは思われるが、あの手この手の「分離し、交渉せよ」の手口には絶対に乗るべきではない。その意味で、拉致問題解決なくして両国関係の進展なし、と終始一貫する日本外交の姿勢は珍しく一本筋が通っている。
とはいいながら、これほど危険な火遊びをお隣さんがなさっているのは、不穏きわまりないのもまた事実だ。核兵器開発放棄の代償が合意され、実行されるまで当分の間は神経戦が続く。こんな時のための日米同盟であり、日中国交の深度化であってみれば、愚直に拉致問題解決を求め続けてゆくスタンスにいささかの揺らぎがあってはなるまい。2千200万人の北朝鮮の国民が、敬愛する将軍様のお陰で疲弊し惨状から脱することが出来ないのは誠に胸が痛む。しかし、だからといってブラフに屈したのではことの解決にならないのも確かだ。歯切れの悪いものの言い方だが、外国との交渉ごとというのは、スパッと割り切れるみたいな解決策にこそ危険が多いのも事実だろう。
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