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2009-05-18 00:00
泥沼状態の中東和平の展望
石川 純一
フリージャーナリスト
オバマ米大統領は4月21日、ヨルダンのアブドラ国王とホワイトハウスで会談、中東和平交渉の停滞を打破するため、米国が「深い関与」を進める方針を表明した。同大統領は会談で、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長、エジプトのムバラク大統領を近く個別に招き、イスラエルとパレスチナの2国家共存案の実現に向け説得を図る方針を明らかにした。が、肝心要の当事者たちにその気は全くない。
まず、イスラエル国会(クネセト)が3月31日深夜に承認した右派リクードのネタニヤフ党首率いる新内閣。これまでの2国家共存によるパレスチナ和平実現策を「機能していない」と切り捨て。ネタニヤフ氏は約10年ぶり2回目の首相就任。外相には極右「わが家イスラエル」のリーベルマン党首、国防相には労働党のバラク党首が就任した。国会の信任投票では、全120人のうち69人が新たな連立政権の承認に賛成した。労働党の一部議員は政権参加に反対し、欠席したとみられる。ネタニヤフ氏は国会承認に先立ち演説し、「過激な政権が核武装しようとしている」とイランの脅威を強調。が、パレスチナ和平については、米国など国際社会が唱えるパレスチナ国家樹立にはついに言及せず。
オバマ大統領が中東和平実現の切り札として送り込んだミッチェル米中東特使は、4月17日、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸ラマラでアッバス議長と会談した。現地からの報道によると、アッバス氏は、米国が右派主導のネタニヤフ新政権に対し、パレスチナ国家樹立による「2国共存」案を受け入れ、占領地でのユダヤ人入植地拡大を凍結するよう圧力をかけるべきだと訴えた。
これに先立ち、ミッチェル氏は4月16日にネタニヤフ首相と会談、同首相はパレスチナ自治政府との和平交渉再開の条件として、パレスチナ側が拒否してきた「ユダヤ人国家」としてのイスラエルの承認を求めた模様だ。いずれにせよ、イスラエル側が、核開発を進めるイランを最大の域内不安要因と規定し、イスラエル建国後半世紀以上にわたって中東政治の眼目だったパレスチナ問題は、少なくともネタニヤフ政権下では脇に押しやられた形。オバマ政権がいかなる説得に動こうと、ネタニヤフ政権が「オスロ合意」以降の2国家共存を強く推進するとは全く思われない。パレスチナ和平は今、大きな停滞期に突入したといえる。
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