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2009-05-15 00:00
自民は、「鳩山なら二重権力構造」と攻撃
杉浦正章
政治評論家
民主党代表選挙は鳩山由紀夫優勢となり、自民党内では「鳩山代表なら、選挙がしやすくなる」(党首脳)との見方が広がっている。もし総選挙で「鳩山政権」が実現すれば、「小沢院政」が単に民主党への影響力行使にとどまらず、政権そのものの二重権力構造を意味することになるからだ。まさに自民党は選挙戦で「小沢傀儡政権が実現していいのか」の一点をついてゆくことになるだろう。これには説得力がある。選挙は水物で、常に逆転が起こると見なければなるまいが、小沢の「短期決戦戦略」が奏功して、岡田は時間不足で苦戦を強いられている。鳩山は、政治的には“小沢丸抱え”で代表に就かせて貰うわけであるから、対世論的に不利と分かっていても、小沢を切るに切れない図式である。
5月14日の記者会見でも、「小沢さんが代表として歩まれた道は、決して間違ってはいなかった」と功績を強調したばかりか、代表に就任した場合の小沢の処遇について、「トロイカ・プラス・ワンの形にしたい」と述べ、菅と岡田を加えた4人で党運営に当たる考えを示した。最大の人事上の優遇である。これはまぎれもなく「小沢院政」を公言したことになり、「かいらい政権だと呼ばれるつもりはない」との自らの発言を否定することになる。加えて政策面でも、鳩山は民主党の政策の最大の弱点である「財源問題」について(1)無駄遣いを洗い直せば、財源は生み出せる、(2)消費税の引き上げは、議論すらすべきでない、と強調した。これでは小沢路線をそのまま継承する方針にほかならない。この流れはまさに自民党にとって思うつぼということになるわけだ。自民党が一番恐れていたのは、第三の候補として民主党政策調査会長代理・長妻昭が登場することだった。
「ミスター年金が登場しては、一挙に民主党が浮動票をかっさらう」(選対幹部)と危惧(きぐ)していたが、結局第三の候補は出なかった。加えて長妻の次に恐れていた岡田の可能性が弱まってきたのも、自民党にとって民主党を選挙戦で叩く最大の口実を得ることになる。既に元幹事長・山崎拓は「もし鳩山さんになれば、小沢傀儡のイメージはぬぐえない」との見方を表明している。「院政」が民主党の動向を左右しているうちはまだよいが、政権に「小沢院政」がしかれれば、事態は深刻になる。政権が小沢によって左右される二重権力構造になるからだ。自民党は、まさに何をされるか分からないと言う危惧(きぐ)を国民に指摘できるのだ。
最大のテーマである消費税導入問題をほおかぶりしてよいのかと訴えることが出来るし、安保・防衛問題でも小沢の「第七艦隊で十分」発言など、稚拙な日米安保体制の“理解度”を攻撃出来る。小沢は検察批判を繰り返しており、鳩山政権となれば、逆に小沢が「指揮権」を発動しかねないことも訴えられる。つまり、第一秘書問題に圧力をかけるばかりか、自民党側の「西松問題」への捜査にむけて圧力をかけることも可能となる。「院政」とはそういうものなのだ、と訴える訳だ。「西松問題」での説明責任問題も、願ってもないテーマとなる。鳩山が代表になれば、まさに「おんぶお化け」を背にしたままで、民主党は選挙戦を戦うことになる。たしかに首相・麻生太郎は「鳩山プラス小沢」との選挙戦となれば、戦いやすい。「小沢続投」での選挙戦より不利にはなるが、それでも岡田や長妻と戦うよりは有利だろう。
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