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2009-05-13 00:00
(連載)日本のソフト・パワーとしてのサブカルチャー(6)
水野 勝康
特定社会保険労務士
また、版権の部分で支援することも考えられる。先に述べたとおり、正式な版権を取って翻訳すると、消費者の手元に届くまでに価格が倍以上になることがある。これでは、発展途上国の人々が日本の漫画やアニメに触れるのは難しくなる。かといって、海賊版を野放しにすべきではない。著作権や版権の問題だけでなく、海賊版は暴力団やマフィアの資金源になる可能性もあるからだ。もろちんタダで配るわけにもいかない。そうすると、例えば、発展途上国の企業が日本のアニメを放映したり、漫画を販売する場合に、版権にかかる費用の一部を日本政府が負担し、正式な権利のあるものが広く浸透するようにするということが考えられる。
アメリカは、「有償軍事援助」という名目で発展途上国を中心とした諸外国に武器を売りさばいているが、日本は娯楽を供与する。タダでアニメや漫画を配るわけではないから、「有償娯楽援助」とでも言おうか。中進国や発展途上国は娯楽が少ない。少なくとも、娯楽が増えることは歓迎されるであろう。日本のサブカルチャーを今まで以上に発信することで、日本のイメージを向上させ、支持や理解を得られやすいようになるのではないか。もちろん、文化的・宗教的に相手国に受け入れられない日本のサブカルチャーがあることを忘れてはならない。先に挙げたサウジアラビア王国における「ポケットモンスター」は一例である。
ちなみに、「ポケットモンスター」はイスラム教解釈では偶像崇拝の問題のほか、キャラクターが変化する様子は、イスラム教で否定されている「進化論である、或いはカードを交換しながら揃えていくというカードゲームのやり方はイスラム教で禁止されている賭博である」という指摘もなされている。20年以上前になるが、チョコレート菓子のおまけのシールでアニメ化もされた「ビックリマン」では、天使・お守り・悪魔のシールがあったが、悪魔のシールに登場する悪魔の頭上には、どう見ても「ダビデの星」にしか見えないマークがついていた。
「ソフト・パワー」は「ハード・パワー」よりも政府のコントロールが効きにくい。ゆえに、注意しないと、かえって日本のイメージを悪化させ、反発を招くことになる。この点で、海外発信する際に、アニメや漫画とは直接関係のない宗教学などの専門家にチェックさせ、後日の紛争を防ぐことも必要ではないか。これが検閲であってはならないことは言うまでもない。「ソフト・パワー」は国家が管理できる性格のものではないし、また国家が介入して必ず期待通りの成果が上がるとも限らない。そうした点では曖昧模糊とした部分も多い。日本への親近感を抱くどころか、日本に対する敵愾心を掻き立てる可能性もないわけではない。しかし、日本の国際社会におけるイメージを上げ、親近感を持ってもらうという意味で、サブカルチャーの果たす役割は小さくないものと、私は考えるのである。(おわり)
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