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2009-05-12 00:00
(連載)日本のソフト・パワーとしてのサブカルチャー(5)
水野 勝康
特定社会保険労務士
以上見てきたとおり、漫画やアニメなどのサブカルチャーは、日本の持つ重要な「ソフト・パワー」と言うことができる。では、どのようにして活用していくか。「ソフト・パワー」の特徴は、軍事力や経済力などの「ハード・パワー」と異なり、数字などのきっちりした形で示すことのできないものである。また、政府がコントロールしても、思ったとおりの結果が出るとは限らない。麻生総理は、自他共に認める漫画好きで、漫画「ローゼンメイデン」を読んでいたことがネット上で話題になり、「ローゼン閣下」「ローゼン麻生」というあだ名がついている。
ご本人も秋葉原で演説をするなど、政治活動で随分意識しているようだ。それはいいとして(「よくない。首相として品位に欠けるのではないか」という意見もある)、麻生内閣の肝煎りとして、「アニメの殿堂」と称し「国立メディア芸術総合センター」なる施設を117億円もかけて作るのはいかがなものだろうか。民主党の鳩山由紀夫幹事長のように「国営マンガ喫茶」とまで酷評はしないが、サブカルチャーの普及発展にどれだけ役立つかは疑問である。保存に関して言えば、発売された漫画は基本的に国立国会図書館に収蔵されるし、アニメやゲームも同様に国会図書館に収蔵すれば済む話であるからだ。
サブカルチャーを「ソフト・パワー」として考えると、やはりまず海外へどのように発信していくかが第一になる。日本で発売されたものが翻訳され、消費者の手元に届く頃には、それなりの金額になっていることが多い。私が見たケースでは、「魔法先生ネギま!」(赤松健・講談社)は日本では420円だが、アメリカでは10.95ドルで売られていた。消費者の手元に届くまでに、倍以上の価格になってしまうわけである。アメリカは先進国であるからそれなりに購買能力を持っている人たちはいるだろうが、中進国や発展途上国では消費者の購買力は無視できない問題になる。正式な契約を結び、翻訳をすると、価格が倍以上になるのでは、中進国や発展途上国の消費者は手が届かないだろう。
こうなると、いきおい海賊版が出回ることになる。実は、発展途上国時代の韓国や台湾では、日本の漫画は海賊版として売られており、その後著作権のことがやかましくなってから、日本の出版社と契約を結ぶようになった。1990年代以降の話である。同じサブカルチャー関係でも、ハコモノに117億円も投資するよりも、字幕版のアニメや漫画の翻訳などに投資した方が賢明ではないだろうか。台湾や韓国などでは日本語の話者も多いため、日本の漫画を翻訳する翻訳業が現地で立派に成り立っている。しかし、発展途上国や少数言語に関しては、そうもいくまい。そうした翻訳をサポートすることは重要であろう。(つづく)
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