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2009-05-12 00:00
清新な岡田か、小沢院政の鳩山か
杉浦正章
政治評論家
民主党は代表・小沢一郎の後継を、「小沢院政」を意味する鳩山由紀夫ではなく、党出直しを演出できる副代表・岡田克也にすべきだろう。そうすれば小沢型政治を刷新するイメージが濃厚となり、「政権交代 」を視野に入れることが可能となる。小沢辞任に伴う代表選出で、国会は少なくとも一週間の政治空白が出来るが、その持つ意味は大きい。補正予算案の成立を目指す以上6月3日の会期内解散はまず不可能となり、国会は大幅延長必至となるからだ。「7月解散8月選挙」の流れが一段と強まってきた。「何でこの時期に」という愚問がはやっているが、答えは簡単だ。こらえきれなくなって、しがみついている崖っぷちから手を離しただけだ。小沢の辞任表明は遅きに失した。
2カ月前の第1秘書逮捕ですぐに辞任していれば、首相・麻生太郎にアドバンテージと政局の主導権をとられることはなかった。小沢が代表の座にしがみついているが故に、麻生内閣の支持率は上昇を続けた。10%台で息も絶え絶えだったのに、30%前後と、いつ解散総選挙に踏み切ってもよい「普通の支持率」を回復したのだ。記者会見で小沢は、辞任の理由をメディアの批判の矛先が自分に向き続けたことにあるとして、西松問題への反省の弁はなく、説明責任は一切果たさなかった。その口ぶりからは、明らかに今後党内に「院政」をしきたい姿勢がうかがわれた。小沢の選挙に強いノウハウを活用するため「選挙対策本部長」説まで出ている。小沢は「辞めるものが後継を指名するつもりはない」と述べたが、意中は小沢に尽くし続けた鳩山にあるのは間違いあるまい。
鳩山はさる3日に小沢から辞意を伝えられたが、慰留していたことを明らかにしている。党首会談の設定は、小沢を辞めさせないためでもあったのだ。しかし、大敗を承知で党首会談に臨む度胸は、小沢にはなかった。党首会談を前に雲を霞と遁走したのが実態だ。「あえてこの身をなげうつことを決意した」と大仰に選挙対策のために身を殉ずる点を強調したが、この演出はその意味で底が割れている。問題は有権者の小沢アレルギーを承知で小沢の院政を認めれば、民主党に明日はないということだ。選挙対策本部長で総選挙の前面に立てるような構想は、まだ民主党が置かれた事態を理解していない証拠だ。したがって後継は岡田克也を軸に展開するだろうし、そうすべきだ。鳩山は小沢に近すぎることと、小沢続投を最後まで支持し続けた責任は大きく、清新な感じもない。政権交代となった場合、岡田が首相の役割を果たせるかどうかは未知数だが、民主党にとって重要な点が一つある。
それは、岡田ならその清新イメージで、いったんは消えかけた有権者の「政権交代志向」が復活しうるのだ。総選挙を前にした政党にとって、これほど重要なことはない。小沢グループなど鳩山支持派が動き出す気配もあるが、党内が代表人事をめぐる抗争に発展すれば、漁夫の利は政府・与党にある。小沢の辞任で、解散の主導権が一挙に民主党に移ったなどという荒唐無稽(むけい)な論調が、民間テレビにあるが、政治を知らない議論だ。麻生が制約されるのは、民主党の代表選出期間中は、政治道義上解散できないということだけだ。代表が選出されれば、麻生はいつでも解散可能だ。しかし補正予算案と海賊対策法案など重要法案の成立を考えると、会期の大幅延長は避けられまい。7月12日の都議選や天皇外遊を考慮すると、7月中下旬の解散、8月選挙が有力となる。総選挙は、岡田が代表なら政権の帰趨(すう)を賭けた政治決戦となるだろう。「鳩山代表」なら自民党の思うつぼだ。
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