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2009-05-07 00:00
「消されたヘッドライン」が示唆するもの
伊奈 久喜
新聞記者
経済危機は各国の権力構造にも影響を与える。ニューヨークよりワシントン、上海より北京の力がますます強くなる。政府と中央銀行の力が民間経済・金融の影響力をはるかにしのぐようになるからだ。日本にはニューヨーク、上海にあたる都市がないので東京の力が一層強まる。「消されたヘッドライン」(東宝東和配給)は、5月22日に封切り予定の映画の題名である。皮肉にも米国発の経済危機の結果、世界の権力の集積地としての相対的な重さを増し、情報の街であるワシントンが舞台である。
ヘッドラインは「見出し」の意味だから、新聞社が舞台と想像がつくが、原題は「state of play」。直訳すれば「プレーの状態」だから、野球でタイムがかかった状態ではなく、プレーつまり真剣勝負が続いている状態と想像できるが、英語のよくわかるひとに正確な意味を聞きたいところだ。キャストは豪華。ラッセル・クロウがワシントン・グローブ紙の事件記者、ベン・アフレックが連邦下院議員、「クイーン」でエリザベス女王を演じたヘレン・ミレンがワシントン・グローブ編集長になる。ストーリーを詳述はできないが、ワシントン・グローブは明らかにワシントン・ポストをモデルにしており、その意味ではウォーターゲート事件を取材した記者たちを描いた「大統領の陰謀」に似ている。
ワシントンの光景がしばしば現れ、在勤経験者には懐かしいが、あまたあるワシントン映画とは違い、ホワイトハウスや大統領は出てこない。アメリカ人が好む大統領ものではない。切り口はより今日的であり、議会と企業、そして記者たちの物語である。ネットに押されて古いメディアになり、厳しい経営環境にある新聞界の現実もわかる。
手前みそになるが、権力の悪を暴くのは、日ごろから広い人脈を築き、深い取材をする、いわば職人のような記者であって、印象論を軽い調子でつづるブロガーではない。この作品ではネット記者が新聞記者に取材のイロハを教えられ、本物の記者になっていく過程も描かれている。面白かったのは、ワシントン・グローブの編集局に「編集長を信用するな」と書かれた紙が貼ってあった点だ。現場で取材した記者の情報こそが貴重であり、自分の取材を大事にせよ、という意味なのだろうか。
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