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2009-04-24 00:00
国際貢献についての日本の立場を再考しよう
湯下 博之
杏林大学客員教授
日本の政府開発援助(ODA)が世界で相対的に後退している現状や、インド洋での給油問題やソマリア沖での海賊対策をめぐる日本国内での議論を聞いていると、国際社会の主要な一員としての役割とか、国際協力ないしは国際貢献の必要とか、という問題について、戦後半世紀以上が経ち、状況が戦後あるいは冷戦時代とは一変しているのにもかかわらず、まったく旧態依然の議論が行なわれているように思われる。今日、われわれは、基本に立ち戻って、国としてのあり方をよく考えてみる必要があるのではないだろうか。そのことを痛感する。国際社会は、国内社会とは異なり、政府もなければ議会もない、警察もない、という社会である。そのような社会では、平和や安全保障の問題であれ、経済や地球温暖化といった問題であれ、有力国を中心に諸国が協議し、協力して事柄を処理したり、問題を解決したりする以外に方法はない。主要国が応分の発言や貢献をすることが、世界が安定し繁栄するために不可欠である。そのようにしない国やひとりよがりの行動をとる国は、非協力的なメンバーとして仲間はずれになる。
もちろん、冷戦時代のように米ソ二極が圧倒的な力を保持していた時代は、米ソ二国が発言権を握り、他の諸国は米ソ二国の動向を踏まえて行動せざるを得なかったので、独自の発言や貢献を求められることもなく、その余地もなかった。しかし、冷戦時代が終わり、米国一極の時代にも変化が生じて、次第に多極化の傾向が生まれている。更に、米国のオバマ新政権は、対話と国際協調を重視し、政策立案の段階から主要国の参加を求め、応分の貢献を期待していると言われている。
そうなると、これからの国際社会においては、主要国の責任ある発言や行動が極めて大切になってくる。台頭する中国が、国際社会の「責任ある利害関係者」になるかどうかは、アジアひいては世界にとって大きな問題であるが、日本は米国等と協力して中国がそうなるように善導することに努める必要がある。その他の問題を含め、日本が主要国として国際社会の安定や繁栄のために積極的に発言し、応分の貢献をするのでなければ、日本の存在がうとんぜられることとなろう。それは日本国民に不利益をもたらすものである。
日本の国際貢献のうち、国際社会の平和や安全に関するもの、特に自衛隊の海外派遣については、戦前の軍国主義の歴史や憲法解釈とも関係し、さらに感情問題も絡みうるデリケートな問題であるが、少なくとも憲法との関係はすっきりさせることが大切である。私見では、憲法上の制約は全くないと考える。憲法第9条は日本が他国との紛争解決のために戦争や武力による威嚇又は武力の行使をすることを禁じているが、国際社会の平和や安全への貢献を禁じているとは考えられない。むしろ、憲法前文は、「日本国民は、・・・・平和を維持し・・・圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と述べている。世界第二の経済大国である主要国の日本は、国際社会の平和や安全の分野を含めて、積極的に発言し、応分の貢献をすることが、憲法の精神に沿うのではないであろうか。国際貢献に関する日本のあり方について、冷静かつ真剣な検討を広めたい。
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