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2009-04-16 00:00
(連載)国会議員の定年制は本当に正論か(2)
水野 勝康
特定社会保険労務士
日本では、議会制度を考えるとき、常にアメリカが引き合いに出される。「アメリカに比べて議員が多すぎる」とか「アメリカには議員宿舎がないのだから、日本も不要」というかたちで使われる。だが、多くの場合、アメリカの制度の中で、都合のいいところをつまみ食いしてきていると言える。アメリカでは、「定年」という考え方そのものが、年齢差別であるとされている。そのため、超高齢の国会議員も珍しくない。日系人初の上下院議員となったダニエル・ケン・イノウエ上院議員は、1954年にハワイ州議会議員に当選、1959年に連邦下院議員に当選し、1962年に連邦上院議員となり、84歳の今も現役議員である。ジェイムズ・ストロム・サーモンド上院議員などは、101歳まで議員を務めている。
ダニエル・イノウエ上院議員は、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍に志願し、日系人部隊である第442連隊戦闘団で戦い、右手を失っている。第442連隊戦闘団は、ヨーロッパ戦線で赫赫たる武勲を挙げ、現在に至るもアメリカで最も多くの勲章を受けた部隊である。こうしてアメリカのために日系人が勇敢に戦ったことが、アメリカにおける戦後の日系人の地位向上につながっている。今も現役であるダニエル・イノウエ上院議員は、日系人の地位向上のための努力の歴史の生き証人と言える。定年制を設けることは、裏返せば若いうちから当選できる世襲政治家のほうが政界で重要な地位を占める、のに有利な制度を作り出すとことになるのではないか。
定年制を設ける云々より、むしろ公党にふさわしく、開かれた公正な候補者選定を行う、ことのできる制度をつくるほうが優先されるべきであろう。「政党本位」の政治をするというスローガンのもとで小選挙区制が導入され、地方選挙でも政党色が強まってきている。今や小選挙区では、政党の公認がなければ政治活動をはじめることすらできない。一般的には、「二大政党」の公認候補になれるかどうかで、まず絞りがかけられることになっている。衆議院議員小選挙区選挙では、無所属候補は立候補すること自体は認められているが、ポスターも貼れず、政見放送も出来ない。事実上、無所属での当選を閉ざす制度が導入されている。
いきなり有権者の信を問うことが現実的に難しい制度をあえて作った以上、政党は国民に開かれたものになるのが筋というものではないか。政党が国民に「閉じた」体質を存続させるのなら、無所属でも政党候補に伍して戦える制度に変更されるべきだ。もっとも、現実には予備選挙にしろ、候補者公募にしろ、現在議席を占め又は候補者となっている者からすれば、制度ができれば自分の足元が脅かされることになる。そして、日本の政党が基本的に議員政党である以上、現職議員たちが自分に不利になるようなことに踏み出すとは考えにくい。だが、政党が国民に閉じた体質を維持し続ける以上、国民の政党不信は続くのではなかろうか。(おわり)
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